おフランスから届いたばかりのラベンダー。それはそれはいい香りなのでございます。
スタッフが鼻をくんくんさせながら、うっとりおだやかな表情になっているなかで、なにやら難しい顔をしている白衣のひと。
聞いてみると、上品なラベンダーの香りがとっても気に入ったとのこと。

「だったら、そんな難しい顔しないで」
「ラベンダーって言ったら、思い出すでしょ？『時をかける少女』」
「中学生の女の子が理科室でラベンダーの香りを嗅いで気を失っちゃうところから始まる！」
遠い昔の映画だと思っていたら、いろんな年齢のスタッフが盛り上がります。

「映画で4回、テレビドラマで5回もリメイクされてるんですって」

ササッと、パソコンでググった「時をかけてきた少女」が教えてくれました。

「へぇ〜、それでみんな知ってるんだね」
「このラベンダーで、みんなに喜ばれるお菓子が作れたらいいわねぇ」

何気ないひとことに、白衣のひとの表情がいっそう険しくなってしまい・・・
険しさを通り越して、涙目になっています。

「だ、だいじょうぶ。大丈夫だから」
「じっくり作戦練ればいいんだから」
「あなたなら、できるって」

翌日、工房に現れた白衣のひとは、真っ赤に充血させた目を見開きながら見得（みえ）を切ります。

「こ、これならみんなに喜ばれると思います」
シャチョーが、ただならぬ気配に圧倒されたのか、いいアイデアだと感じたのかは分かりませんが、とにかく一発OKを勝ち取った白衣のひとは、それから奮闘に奮闘を重ねて4種類のエレガントな新商品を創り上げたのでございます。

試作品を試食した、世代を超えた「時をかける少女」軍団も、こぞってナットク。
かくして、おフランスから届いたエレガントなハーブは、通販専用商品として世に出ることと相成ったのでございます。

しっかりめの生地に心地よい加減にエレガントなハーブが香るクーヘン2種、サクッと香ばしさが爽やかなサブレとクッキーをセットにしたラベンダーボックスは、軽やかな春の風にふさわしいオープンテラスで楽しみたくなる新商品に仕上がりました。